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『ヒョウタン文化誌』 湯浅浩史  (岩波書店)

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店員のオススメ

磐田店

『ヒョウタン文化誌』 湯浅浩史  (岩波書店)

磐田店・新書担当:村松のおすすめ



本って素晴らしい! と、再認識させられた、思い入れのある一冊です。

世界各地に伝わる様々なヒョウタンの種類や用途、工芸品が紹介された、
興味深い内容です。

読めば意外な驚きが待っています。

さて…

この本の何に感動したのかと申し上げますと、本の存在そのものです。

本書を最初に手に取って思ったのは、「面白そうではあるが誰が買うのか?」でした。

店員としては、本を手に取るたび、どういう方が購入されるのだろうかと想像するのですが、
本書については見当がつきませんでした。

ヒョウタンが好きな方でしょうが、それはどういう方なのか? わかりません。

そう考えた時、出版を決めた版元に拍手を送りたくなりました。

学術的な価値を考えれば素晴らしいとは思うのですが、おそらく多くの人にとって
ヒョウタンは身近ではないでしょう。

歴史や種類、文化的価値を知っても、なるほどそうか、で終わってしまう話であり、
役に立たない知識かもしれません。

ですが、「役に立つ」だけが重要なのでしょうか。

一見無駄とも思えるもの、生活に必要ではない知識。

こういったものがあるからこそ、心の余裕のようなものが生み出され、
豊かな文化を形成することができるのではないでしょうか。

とはいえ、そのような書籍も売れなければ、いずれ版元も刊行できなくなってしまうかもしれません。

インターネットには情報があふれています。

しかし、目的もなく漠然と何かを探すには適した媒体ではありません。
探すだけで疲れてしまいますし、いちいちこのサイトはアクセスして大丈夫なのかと
心配しなくてはいけません。そのうえ、玉石混交も甚だしい状況です。

本であれば、版元の名前でもおよその見当は付くうえ、この本をさわって大丈夫か、
などと心配せずとも済みます。

本屋、図書館、本のある所に足をお運びになれば、思いもよらない知識との出会いが、
きっと待っています。

「ヒョウタン文化誌」はこういった、本を巡るあれこれについて考えさせてくれた一冊です。

 

良質な文化のためにも、また、良質な知識を提供してくれる良書を守るためにも、
ぜひ私にとっての「ヒョウタン文化誌」のような、皆様にとっての良書を見つけて、
お手に取っていただければと思います。