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『くらげのパポちゃん』  かこさとし 中島加名   (講談社)

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バイヤー(児童書)

『くらげのパポちゃん』  かこさとし 中島加名   (講談社)

児童書バイヤー:田雜のおすすめ



2023年、かこさとしさんの未発表原稿が見つかったことをニュースで知りました。
遺作のテーマは「戦争」。残された原稿はお話だけで絵はついていないため、
かこさんのお孫さんにあたる中島加名さんが絵を描き、
絵本として出版される予定、という内容でした。


幻の遺作がどんな絵本になるのか、この時から楽しみにしていましたが、
今月その絵本がついに発売されました。
くらげのパポちゃんが戦争で父親をなくした男の子に出会い、
海で眠る父親をさがしに大海原へ旅立つ、というお話です。



テーマは戦争ではありますが、かこさんの絵本を読むときにも感じる、
気持ちが柔らかになり、安心できる雰囲気をまとった絵本です。


パポちゃんが海で出会う生き物たちがダイナミックに描かれていますし、海の中の景色も鮮やか。
そして何よりパポちゃんが可愛らしい。
冒険物語として楽しめますし、生き物好きのお子様もよろこんでくれそうです。
そして大冒険の最後に少年の父親と出会う場面で、
「戦争」は悲惨で愚かな出来事だということが静かに胸に迫ります。





年を追うごとに戦争体験者の方が少なくなっていき、
戦争経験談や平和への願いを風化させずにどのように残していくかが課題になっている中で、
かこさんがこの物語を残し、中島さんが絵を描かれて絵本に仕上げられたということは、
戦争を知らない世代が戦争を後世へ伝えていくバトンを受け継いだように感じました。


私も、かこさんがこの物語に込めた思いをお伝えすべく、
ひとりでも多くの方にこの絵本を手に取っていただくのが役目ではないかと思っています。