戦国武将「宇喜多直家」を描いた作品,読後感は「良い」とはいえませんが、妙に印象に残っている作品。
6つの短編で構成されており、最後にひとつのストーリーとして見事に繋がります。
「宇喜多直家」のイメージは謀略家・野心家といったところでしょうが、この本を読んで、また違ったイメージを抱きました。
物語で直家は幼少期に父親に捨てられ母親と極貧なくらしをし、浦上家に仕官し結婚して平穏な家庭を築けると思っていたら、国境近くの最前線の城(それも小城)を守らされたり、挙句の果てには主君に自分の娘を人質にとられ、娘の命と引き換えに自分の妻の実家を攻め滅すよう命令され、そうまでして助けた娘に身内を殺した父親として憎まれてしまい、「これは、性格変わるよな」という人生を送っています。
途中までは、,登場人物の誰もが幸せになっていない!なんて救いようのない人生なんだ!、と思いページをめくるスピードがあがりませんでしたが、だんだん直家の抱えている業の深さやどうにも不器用なやさしさの表現が切なくなり、母親の息子に対する愛情の深さも思い知らされました。
最後まで読んでもどこかモヤモヤ感が残り、自分の中でうまく消化できない部分もあり、それだけにとても記憶に残っている1冊でした。