『かっこうの親もずの子ども』で椰月小説の大ファンとなり、その後『伶也と』では究極の愛に打ちのめされ、『14歳の水平線』では中年なのに青春を再謳歌させてもらった。
どれを読んでも、椰月さんの小説は素晴らしいのだが、『明日の食卓』は虐待のニュースが絶えないこんな時代だからこそ、一人でも多くの方に読んでいただきたい一冊。
正直に申し上げると、読後まず最初に訪れた感情は「よかった・・・」というホッとした思いだった。
ネタバレになってしまうので詳しくは読んでもらいたいからここでは書くことはできないが、この自分が抱いた最初の思い「ホッとする」という感情が本当に危険な思考だった。
と、ふと我に返って気が付き、恐ろしくなった。
それはこの「ホッとする」という感情が、自分に関心のない、感情移入していない知らない誰かの「死」に対しては、自分の知っている、関心のある人物でなくてよかった、という「ホッとする」だからだ。
確実に一人の子どもが亡くなってしまったのに、物語とはいえ一瞬でも「ホッとする」、この無関心という感情が無くならない限り世界から虐待は消えない、そう感じた。
つまるところ、読後最初に「ホッとした」自分に対し、時間が経つにつれ嫌悪感をいだき、「危険」「怖い」という思いを突きつけられた、すごく考えさせられる小説だった。
椰月さんの小説は文体がなめらかで非常に読みやすいのだが、内容は尖っていて心にぐっと刺さる。
偉そうな言い方になってしまうが、本当に、本当に読む価値のある『小説』だ。