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『自転しながら公転する』山本文緒(新潮社)

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『自転しながら公転する』山本文緒(新潮社)

営業本部:野尻のおすすめ

 

山本文緒さんの新刊が7年ぶりに発売されると聞き、舞い上がった。
それだけで嬉しさのあまり、仕事のモチベーションも上がった。
しかし、この新型コロナウイルスの影響か、先日刊行がこの2020年秋を目指して延期、と発表になった。
一気にテンションが下がる。
モチベーションも低下。
。゚(゚´Д`゚)゚。
これだけで、どれだけ自分が山本文緒さんの新刊を待ち望んでいたかよくわかった。

実際のところ、これから更に加筆修正が入るのかもしれないが、新潮社様からプルーフ本を頂き、物語は読み終わっている。
当たり前なのだが、最高なのだ。
いつだって何年経ったって山本文緒は最高なのだ。
しかし、書店員である我々はそれだけでは満足しない。
この素晴らしい小説を一人でも多くの読者に届けてこそ、本当の満足に浸れるのだ・・・。
まぁ、発売延期だから仕方がない。発売中止だったら事務所で一人暴動を起こしている。
秋までは一つ季節を跨ぐが、「待ったかいがあった!」ときっと思えることでしょう。。。


さてさて、この「自転しながら公転する」。
32歳の与野都が、更年期障害の母親看病のために東京から茨城県の牛久の実家に戻り、牛久大仏を望むアウトレットモールで非正規社員として働くところから物語は始まる。
読み始めて、すぐに!?となる。
浜松在住の私が、なぜかものすごくリアルに情景を頭に浮かべることができたのだ。
それもそのはず、妻の実家が茨城県つくばにあり、年数回帰省する際は必ず牛久大仏を望む阿見アウトレットモールに立ち寄ってから実家に帰るのだ。
そして、牛久大仏がある牛久御苑には義母が眠る。
どうりて臨場感がより一層あるはずだ。


冒頭から引き込まれ、480ページ弱を一気読みした。
都が同じアウトレット内で働く貫一に出会い、付き合い始めるがなかなか経済的に安定せず、真意も読みにくい貫一との間で結婚に対する不安もあり、そして職場でのセクハラ、パワハラなどにも悩まされる。
誰に起きてもいてもおかしくない日常がそこには描かれ、普通の人たちの普通の悩みに物語は寄り添う。

恋愛も家族も仕事もどれも大切にしているが、どれも全力ではできない。
『別にそんなに幸せになろうとしなくていい。少しくらい不幸でいい。思い通りにはならないもの』
こんなふうに認めてあげられたら、少しは生きやすくなるのだろうな。
この『自転しながら公転する』というタイトルもさながら、なんだか、ふんわりポジティブでいい。
色々あってもしっかりと変化・前進・向上している自分を認めてあげたい。

もうね、谷島屋じゃなくてもいいから、この山本文緒さんの新刊「自転しながら公転する」お近くの本屋で予約してください。
いや、谷島屋だったらなお嬉しいけど・・・。
秋までのんびり待ちましょうー(^^)