「あなたのために~」
「~だからわかるよ」
何かの折に不意に誰かに投げかけられた言葉。
表面的には正しいこと「のように」聞こえるのに、なぜだか妙に気持ちがモヤモヤしてしまうときはないだろうか。
その瞬間には何に違和感を覚えているのか、何がどう腑に落ちないのかうまく言葉にできなくて、なんとなく、相手が正しいような雰囲気で流れて行ってしまった場面。
はっきりとは思い出せなくても確かにそんな経験があったと思えるのは、正しそうな言葉に内包された相手の「ずるさ」が、知らず知らずのうちに心に引っかき傷を残していたからかもしれない。
これはそんな「ずるい言葉」に反論する術や知識をまだ持ち得ていない中高生が、周囲の「ずるさ」にきちんと立ち向かう知恵を身につけてもらうための本で、「ずるい言葉」を使ってしまったり使われてしまったりする大人に向けての本でもある。
正しそうに聞こえる言葉というのはとても便利で、時にとても暴力的だ。
人と人が関われば立場もものの感じ方も色々な価値観もそれぞれの視点があるのに、それら一切合切を無視して正しそうな言葉を振るわれると、人によっては自分が悪いのだ、と自責の念に駆られてしまうこともあるだろう。
もちろん、冷静に考えて反省すべき点を見つけることは大事だ。
けれど、相手の「正しそうな言葉」には、自分の思い通りに物事を動かしたかったり、自分のものの見方を正当化したいがゆえの「ずるさ」が含まれてはいないか、若者もそうでない者も、発言を受ける側もする側も、自分の頭で考え続けて先入観を解きほぐしていくことも、同じぐらいに大事で見失ってはいけないことだ。