本書は、アメリカの13州を股にかけて動き回り、その土地、その土地で冷酷な殺人を繰り返した、
イスラエル・キーズという男の物語です。
歴史上、「切り裂きジャック」や「テッド・バンディ」等、世界中にその名を轟かせ、また世界中
の人々を震撼させた連続殺人犯(=シリアルキラー)が存在します。それらの犯行の記録を読んで
いても、読者は自身がこうした残忍な殺人事件に巻き込まれるなど露程も思わないでしょう。
ところが、私はこのイスラエル・キーズという連続殺人犯の記録を読み終えた後、自分自身や家族
のことが心配で仕方なくなりました。
結婚して家庭を持ち、本業もあるのに、足がつかないように全米中を行動範囲とし、冷酷な殺しを
行うための“殺人キット”を各所に用意しておく。“獲物”となる被害者に狙いを定めた後は、異常な
執着を発揮して、素早く“獲物”を仕留める(=殺害する)という具合で、全く人間的なところがなく、
本書のタイトルの通り、動物界における“捕食者”のようにしか感じられないのです。
こんな存在に狙われたとしたら、どうやって身を守る術があるのでしょうか?
常にそうした危険と隣り合わせであることを自覚し、リスクを少しでも減らすこと以外に方法は思い
付きません。
日本でも、本書のような無差別殺人が増加しているように思えます。
「事実は小説よりも奇なり」
この言葉通りの、恐ろしい読書体験となりました。