コロナ禍となってから、「旅」が私たちの生活から消えてしまった。
国内でさえ移動することが憚られた期間があった。
もともと頻繁に旅をしていた訳でもないのに、旅できない、という状況が想像以上に
気持ちを窮屈にさせることに気がついた。
そんな中、少しずつ読み進めた本がある。
石川直樹著「地上に星座をつくる」だ。
本書には写真家・石川直樹さんの2012年から2019年に至る7年間の旅の記録が
綴られている。
石川さんの旅は冬の山形でマタギに同行するところから始まり、エベレスト登頂、
ユーコン河下り、海抜0mからの富士登山、知床ではクマと過ごし、沖縄の海に漂着したクジラを見に行き、
オーストラリアでアボリジニの壁画に出会い、そしてまたヒマラヤへ、といった様々な軌跡を描いている。
その軌跡はまさに地上に星座を形作っている。
どの旅をとっても、私が一生かけても見聞きすることができないような体験で溢れているのだが、
見た事、感じた事をその瞬間に書き残しているかのような文章に、
自分も同じものを見聞きしているような感覚になり、未知のものに出会う「旅」をしている気分になる。
一つの旅を読み終えると窮屈だった気持ちが少しほぐれていることに気づくのだ。
これから徐々に旅が日常生活に戻ってきそうだ。
自分で旅に出かけることができるようになるまで、
本書を読んで旅をする感覚や喜びを忘れないでいたいと思う。
同じように「旅」を待ち望んでいる方に是非読んでいただきたい一冊です。