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『すゞしろ日記』山口晃(画家) (羽鳥書店)

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『すゞしろ日記』山口晃(画家) (羽鳥書店)

バイヤー:永山のおすすめ



まずもって、なかなかに読みづらい本であることは断っておきたい。
べつに文章が難解だとか専門用語が飛び交うとか、そういう意味での読みづらさではなく、ただ、細かいこまかい文字と絵が、これまた小さくちいさく割ったコマに詰め込まれているためだ。

巻頭と巻末のカラーページ以外は、著者自らが端書きで”小市民的な日常“と書いているように、日常のできごとや思ったことが綴られている。
(個人的にはカラーページ「斗米庵双六」「白州探訪乃記」がとても好き)
ほとんどのエピソードに登場する「カミさん」と些細なことで大ゲンカ、上野駅であわや職務質問一歩手前、なついてくれていると思っていた妻の実家の犬を散歩に連れていこうとしたら微動だにせず、仔犬の写真にテンションが上がる……。
日々の悲喜こもごもが茶目っ気まじりに描かれていて、ところどころで「ふふっ」と笑いがこみあげてくる。
本人も作中で言っているけれど、専門である”絵”のことについて語るエピソードは数えるほどしか出てこないので、美術に明るくない人でも安心。(私のことだ)
その日あったことを思いついたときに書き殴るようなラフさだからこそ、にじみ出る人柄になおのこと親しみを感じる。
絵のうまい知り合いのおじさんの絵日記を読ませてもらっている、なんだかえらく不躾な言い方ではあるけれど、読んでいるうちにそういう心持ちになってくるのだ。