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『ウーマン・イン・ザ・ウインドウ 上/下』 A・J・フィン  池田真紀子(早川書房)

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店員のオススメ

流通通り店

『ウーマン・イン・ザ・ウインドウ 上/下』 A・J・フィン  池田真紀子(早川書房)

流通通り店:八木のおすすめ



 広場恐怖症により、家から出られない。
 窓から近所の様子を眺めている。
 殺人事件を目撃する。

そんな女性が探偵役になるミステリです。上の三行から、うっすら寒気を感じるような、ちょっとジメっとした物語と想像して読み始めたら、意外にも穏やかな調子で物語は進行します。
主人公アナ・フォックスは確かに広場恐怖症で、家から出られないけれど、主治医も理学療法士も自宅に来てくれるし、地下室を貸し出して、住人が家のことを手伝ってくれる。
お酒を飲みながら映画鑑賞、そして窓から近隣住民の様子を眺めてあれこれ想像している。
安部公房『箱男』を思い出しました。あれは冷蔵庫の箱、自ら入った。これは家、出られない、という違いはあるけれど、自分とそれ以外に境界を作っている共通点。
一方的に見ていたはずが、向こうからも見られていた、とわかったときの、安定世界が壊れるような寒気。
読み進めるうちに、違和感が芽生え、首をかしげているうちにすり替わり、あれ、と思っていたら正解が飛んできて―、でもこれ、正解なの?
どんでん返し、というと感覚が合わないかもしれません。着地した、と思ったところに、まだ扉が開いて待っていた、みたいな感覚でしょうか。どこまでも物語に落ちていく感覚。お楽しみください。