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『逃げ出せなかった君へ』 安藤祐介 (KADOKAWA)

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『逃げ出せなかった君へ』 安藤祐介 (KADOKAWA)

営業本部:野尻のおすすめ

  

いやぁ、切ねぇ。
なんて切ない小説を書くんだ、安藤祐介は。
あまりに切なくて、辛くて、胸をぎゅっと押しつぶされような思いがして、うまく感想を文章にできない。

昔2000年問題直前のPCメーカーに勤務していた頃を思い出した。
これほどまでにブラック企業だったわけではなく、いやむしろ色々と整ったしっかりとした企業だったのだが、所属部署の関係上PCエンドユーザーから「てめぇ、死ぬ気で直しに来いっ!」などと一日何度も電話越しに怒鳴られていて、同じ部署の人間たちは次々と病んでいった。次は俺か?、いやそうなる前に逃げ出さなければ、そんな思いに駆られていた15年前の思いが、まるで昨日のことのように甦った。
この「逃げ出せなかった君へ」を読んで。

6話からなる連作短編小説は、ただのブラック企業を舞台にした物語ではない。
そこには、仲間や家族、優しさや悲しみ憎しみ、命の大切さなど多くのことが様々なエピソードを通じて織り込まれている。
企業人としても、一人の親としても、自然に溢れ出てくる涙を抑えることは出来なかった。

いや、本当にうまく思いを文章に出来ない。
書店員としてこの本の良さを、これほどまでに伝える術の無さと文才の無さを情けなく思う。