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『このほんよんでくれ!』 ベネディクト・カルボネリ ミカエル・ドゥリュリュー 穂村弘 (クレヨンハウス)

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店員のオススメ

バイヤー(児童書)

『このほんよんでくれ!』 ベネディクト・カルボネリ ミカエル・ドゥリュリュー 穂村弘 (クレヨンハウス)

児童書バイヤー:井澤のおすすめ



先月発売したばかりの「本」をテーマにした新刊絵本をご紹介します。
タイトルを見ず、表紙の絵だけを見ると、凶暴なオオカミが小さなウサギを脅しているようです。
ウサギが読んでいた本を地面に抑え、今にも食べてしまいそうな雰囲気ですが・・・。
けれど、本当のお話は違うのです。
人間の親子の読み聞かせを聞いていたオオカミは、お話の続きが知りたくてたまりません。
偶然、その絵本を手に入れたものの、オオカミは字を読むことができませんでした。
「このほんよんでくれ!」とみんなにお願いしても、オオカミがこわくて断られてしまう中、小さなウサギだけは
ぜったいに食べたりしないという約束のもと、その本をオオカミに読んであげることになりました。
絵本を読んでもらうことがうれしくてたまらないオオカミの姿がたくさん描かれています。
この絵本ではそれを、【えほんのまほうがききはじめた】と表現されているのが素敵だなと思いました。
そして何度も読んで読んでとお願いするうちに、「おれによみかたをおしえてくれないか?」とウサギにお願いするのです。
ここで表紙とまったく同じシーンになるのですが、さっきは意地悪そうな悪い目つきだったオオカミの顔は私には違うように見えました。
本当は、読んでもらう必要がなくなったらオオカミに食べられてしまうんじゃないかというウサギが不安がるシーンが正しいのですが、
私には、本に手を置いて「このほんのよみかたをおしえてくれ!」と懇願中のオオカミの姿。
自分で本を読めるようになるかもしれないという期待への喜びがうっすらと顔にあらわれているんじゃないかと思えてきてしまいました。
きっとそれは、この絵本のオオカミの表情や姿がとても豊かに描かれていて、愛らしくなってしまったからでしょう(笑)
絵本に出てくるみんなの表情もとても豊かに感じるので、このオオカミは本が読めるようになりたいと思っているけれど、私は逆に
自分で字が読めないころにもどって、絵だけを見ながら誰かに読んでもらいたかった絵本だなぁと思いました。
オオカミたちの表情を見てほしいので、聞いている子に伝わるように1ページごとじっくりと読んであげてほしい絵本です。