この物語は、生まれつき脳の扁桃体が小さく、「感情」が理解できない少年・ユンジェの目線で語られます。「感情」を通さない主人公の淡々とした語りだからこそ、周りの登場人物たちが抱く「喜・怒・哀・楽・愛・悪・欲」という感情をより鮮明に感じます。
人と変わった部分がある子どもをもった母親の「感情」、
余命わずかな妻の夢を叶えたい夫の「感情」、
劣悪な環境に身を置いて生き抜かなければならなかった少年の「感情」。
気づくと自然にそれぞれの人物が抱く「感情」に引き込まれています。
人間の「感情」の複雑さと、愛情、友情とは何かという問いがちりばめられている小説です。
本書は韓国で青少年文学賞を受賞しているそうです。
日本の多感な中高生も、この小説をよむことで、様々な「感情」を体験し、他者の「感情」について考えるきっかけになってほしいと思います。
プロローグに「どんな物語でも、本当のところそれが悲劇なのか喜劇なのかは、誰にも永遠にわからないことだ」とあります。
読み終わったとき、あなたはどちらだと感じたか、やはりどちらでもないと感じるのか、ぜひ確かめてみてください。