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『きみはだれかのどうでもいい人』 伊藤朱里 (小学館)

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『きみはだれかのどうでもいい人』 伊藤朱里 (小学館)

営業本部:野尻のおすすめ

 

太宰治賞受賞から、会社全体で応援している作家さん。
地元浜松出身ということが大きいが、それと同時に伊藤朱里という作家の書く物語に魅了されている。



この「きみはだれかのどうでもいい人」。
なんという秀逸なタイトルなのだろうか。
全く知らない人であれば、「だれかの」ということわりも不要な「どうでもいい人」なわけだが、明らかに「だれか」にとって認識されている「きみ」を「どうでもいい人」という冷たく突き放した感覚は、意図的であり恣意的だ。
そこにあるのは、悪意をも通り越した無関心、なのだろうか。
このタイトルに作品の全てが詰まっている、そう感じた。


県税事務所で働く年齢も立場も異なる4人の女性。
同じ職場で同じ景色を見ているはずなのに、これほど違うのか。
その当たり前のことにあらためて驚いた。
そして、その違いが苦しさや生きにくさであり、『きみはだれかのどうでもいい人』になるのだ。
『だれかにとっての大切な人』も『だれかにとってはどうでもいい人』という、その当たり前を突きつけてくる。
目を覚まされた思いだった。

地元出身作家ということもあるが、それ以上に書店人としてこれからも応援し続けたい。