私は結婚していないし、結婚願望も正直なところほとんどない。
「将来の夢はお嫁さん」という気持ちがわからない子どもが、そのまま大人になってしまった感じだ。
そんな人間がこの本を読んだのは、単純に著者の作品が好きだからというところも大きいし、信頼している出版社から発行されたというのもある。
結婚観をがらりと変えてもらいたかったわけでもないし、「結婚したいな」とまではやはりならなかったのだけど、大事な人を大事にして日々を一緒に営んでいくのはいいな、と思った。
著者と”夫”は、特に強烈な個性があるわけでもない、端から見たら平凡な夫婦なのかもしれない。
ただここに書かれている結婚の形は、あたり前だけど私がいままでに見聞きしてきたどれとも少しずつ違っているし、著者の目を通して描かれる”夫”はタイトルの通りとてもかわいい。
直接会っていたら、もしかしたら感じることができないものだったかもしれない、どこかの誰かのいいところ。
その人を大事に思っている誰かの目を借りることで、その魅力の一端に触れることができる。
そういう『遠くて淡いつながり』が生まれる瞬間のよろこびを感じられる。
「寝る前に一、二編」
帯に書かれているように、布団に入ってぱらぱらとページを捲る。
気になったタイトルのところで止まって何編か読んで、ことんと眠りに落ちる、あの幸せな感じにとても似合う本だ。