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『おもたせ暦』 平松洋子 (新潮社)

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『おもたせ暦』 平松洋子 (新潮社)

バイヤー:永山のおすすめ



おもたせ。
だれかのためにと選んだおいしいものが、携えたその場所で自分にもふるまわれる。
「おもたせで悪いけれども」なんて言葉とともに。
なんてすてきな響きだろう。

文章を読む前は、差し込まれているそれぞれの食べものの写真を見てもとくにぱっと目を惹かれるわけでもなく、正直なところ「おいしそう」とか「食べてみたい」という感想が出てくるわけでもなかった。
それが平松さんの目を通すと、姿かたち、包み紙、味、それぞれに施されている仕事がしっかりと輪郭をもつ。
選んでいるときのちょっとしたうきうき、
包みを解かれ目の前に差し出されたときのときめき、
一緒に食べている相手の「おいしい!」
いろんな情景やら感情やらが、くるくると頭の中に浮かんでは消え、はてこれは自分の経験だったかとちょっと混乱する。
そうして、1編読むごとにどの食べものもふしぎといとおしくなってくる。