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『ルリユールおじさん』 伊勢英子 (講談社)

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バイヤー(児童書)

『ルリユールおじさん』 伊勢英子 (講談社)

児童書バイヤー:井澤のおすすめ



とっても大切にしていた植物図鑑がこわれてしまった少女ソフィーは、ルリユール=本造り職人を訪ねます。
「ルリユール」という言葉には「もう一度つなげる」という意味があるそうで、こわれてしまったページは、
一度ばらばらにし、新たに綴じなおし、ぼろぼろになってしまった表紙も新しく作ってくれるというのです。
作者のいせひでこさんの美しい絵で、丁寧に描かれているページや作業をしているおじさんの数々の言葉から
1冊の本ができあがるまではとても尊く、本というものは本当に価値のあるものなのだと思い知らされます。
そして少女が本当にこの植物図鑑を愛している気持ちがとても伝わってくるシーンが多く、
1冊の本をずっと大切にしたいという気持ちは、「紙の本」だから味わえることではないでしょうか。

先日久しぶりにこの絵本のお問い合わせをいただきました。
店舗に在庫はいつも当たり前にあると思っていたくらいの感覚でいたのですが、いつのまにか売れっぱなしになってしまっていました。
とても自分を恥ずかしく思い、急いで取り寄せをしました。出版社も在庫が僅少のようです。
「本には大事な知識や物語や人生や歴史がいっぱいつまっている。それらをわすれないように、未来にむかって伝えていくのがルリユールの仕事なんだ。」
これは、ルリユールおじさんが同じくルリユールだったお父様から伝えられた言葉です。
まさにこの絵本が未来にむかって伝えていかなければならない絵本で、それを伝えていくのが私の書店員の仕事だと改めて思いました。
お問い合わせをしてくださったお客様に感謝しています。いつの間にか忘れてしまっていた大切なことを気づかせてくれました。
この絵本をソフィーの植物図鑑のように、ずっと大切にしてくれる方がきっとこれからもたくさんいると思っています。