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『万事快調〈オール・グリーンズ〉』波木銅(文藝春秋)

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『万事快調〈オール・グリーンズ〉』波木銅(文藝春秋)

営業本部:野尻のおすすめ

 


第28回松本清張賞受賞作品の『万事快調〈オール・グリーンズ〉』(波木銅)がすごい。
どうやら、満場一致で松本清張賞を受賞したようだ。
若干21歳の現役大学生が。
あえて言おう、こんな作品で(←褒め言葉です)。


すごい作品、と言っているのに、〈こんな作品〉という言い方をするのは、〈オール・グリーンズ〉のせい。
なんてったって、このゴダール・ゴラン映画と同じタイトルのこの『万事快調』は、茨城県のクソ田舎(まんま)の底辺工業高校に通う3人の女子高生が、園芸同好会と称して学校の屋上で大麻(マリファナ)をを育てるハチャメチャな物語だからだ。
そこだけ読むとなんて物語だ!と思うかもしれないが、いや、そのまんま。なんて物語なんだ!です。
小説としては、そこまでの完成度というわけではなく、粗い。
でもその荒削りさがそのまんま小説の勢いとなって、読み手をめちゃくちゃ楽しませてくれる。
勝手な想像だけれど、作者の波木さんは、この小説を楽しんで遊びながら書いたのだと感じた。


さて、舞台となる茨城県のクソ田舎(何度も言うが、まんま)の底辺工業高校に通う3人の女子高生は、フリースタイルラップをするヒップホップ女子高生の朴秀美、両親からもらった漫画(大島弓子や萩尾望都など)によって自己形成する岩隈真子、そして最初はその朴と岩隈と敵対していた、ミニシアター系映画好きで映画の仕事に自分の将来を見出している矢口美流紅(ミルク)。

この3人がクソ田舎を飛び出すために、学校の屋上で大麻を栽培し一儲けする。
そんなハチャメチャっぷりが、地方特有の閉塞感を吹き飛ばし、物語に活力を与えている。
そして、その活力を生み出すもう一つの原動力は、音=朴秀美、文=岩隈真子、映=矢口美流紅、の圧倒的なサブカル知識。
ドープな作品やアーティストに、マス向けのメジャー情報を程よくブレンドし、至るところに飛び出すその知識が物語をより一層面白くさせる。
*気がついた情報を下記にまとめてみましたので、よかったら御覧ください(あくまで気がついた分だけ、間違っていたらごめんなさい)。


この『万事快調』はきっと映像映えする。
しかもジャパニーズ特有のコミカルな映画が合う。
真っ先に思い浮かんだのが同じ茨城県舞台の『下妻物語』。あの色。

いやぁ、映像化が本当に楽しみ。
と同時に、この作者が次に何を書くか、それも楽しみ。




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