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『元禄八犬伝 1 さもしい浪人が行く』 田中啓文 (集英社)

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『元禄八犬伝 1 さもしい浪人が行く』 田中啓文 (集英社)

パルシェ店 店長:八木のおすすめ




南総里見八犬伝の熱が冷めやらぬ娘は、夏休みの自由研究に「南総里見八犬伝読み比べ」という、
途方もないテーマを採り、我が家の本棚にいくつかの八犬伝と、脚色された八犬伝が加わることとなった。

八犬士がどのような描写をされているか、どの場面を採用し、カットしているか、などを横断的にまとめた、
なかなか見応えのある資料ができあがっていた。

 

 以前静山社の『南総里見八犬伝』をおすすめした稿で、「網乾左母二郎という人物」が気になったと書いた。さもしい男、左母二郎。

 そんな男が主人公になってしまった。しかもシリーズタイトルは『元禄八犬伝』。

 元禄、しかも大阪! さもしい小悪党に加えて、憎たらしい悪女、船虫まで登場する。

 元ネタを知っているとこいつらが主人公だなんてどうするんだ! と思ってしまうが、
もう一人、盗人がいて、憎まれ口の叩き合いがなんともリズムよく、
本当は腕がいいのだろうになぜか、もたもたした印象で事が進む。
また憎まれ口。

 左母二郎の佇まい、雰囲気が林不忘の丹下左膳を彷彿とさせたり、
一味がそろっているとあの怪盗三世みたいだなんて連想したり、
どことなく滑稽なのに悪い奴の悪さには背筋がヒヤッとすることもあり。

 かなりの変化球だが、八犬伝の入口にこんなところもありなのかも。