Javascriptが無効になっているため、正常に表示できない場合があります。

『サンタクロースの部屋 改訂新版』 松岡享子 (こぐま社)

login
店員のオススメ

サンストリート浜北店

『サンタクロースの部屋 改訂新版』 松岡享子 (こぐま社)

サンストリート浜北店 店長:田中のおすすめ




東京子ども図書館を設立し、長く理事長として活躍された著者による、
子どもと本をめぐるエッセイ集です。
書名にもなっている「サンタクロースの部屋」をめぐるはしがきも
名高いものですが、「お話」をめぐる章をたいへん興味深く、
面白く読みました。

「お話」とは、子どもたちにたいして、一人の語り手が、
童話や昔話などを語って聞かせることです
(いわゆる「読み聞かせ」とは違い、
絵本などを見せながら行うことはないようです)。

著者によると、よく準備され丁寧に行われた「お話」においては、
語り手と子どもたちの共同作業によって非日常の空間が現れ、
子どもたちは「ことばというものがひとつひとつ、イメージや、
情感や、雰囲気や、感動や、…つまり“なにか”を運んで、
自分たちのところへやってくる」ことをじかに経験するといいます。
そこで子どもたちは、ことばが「になうべき重みをもって」
語られることを目の当たりにします。
それは、言葉というものに対する最も基礎的な信頼をはぐくむ、
重要な経験であるように思われます。

本書の初版は1978年ですが、著者は「ことばが、あまりにも軽々しく
浪費されている状況」に危機感を示しています。
言葉に対する不信はすなわち人間に対する不信です。
SNSが深く浸透したいま、私たちをとりまく言葉の数々に、より注意深くありたいものです。