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『遠野物語/山の人生 改版』 柳田国男 (岩波書店)

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富士宮店

『遠野物語/山の人生 改版』 柳田国男 (岩波書店)

富士宮店 店長:河合のおすすめ




山の不思議な話が好きだ。

特に山で生業を営む人が語った、とか山村の古老が~とか煽られるともう堪らない。
最近はこの手の話が流行りらしく、「山怪」や「山の霊異記」などのシリーズが出版され
好評を博しており、それぞれ楽しく読んだが、なんだろうちょっと違う。

例えるなら昔の名作ホラー映画のリメイクがどうも物足りない、という感覚が近いだろうか。
その時代に合わせて色々と整えられて受け入れやすくなっている反面、
オリジナルだけが持つ「おどろおどろしさ」というか「禍々しさ」というか
「迫力」が削がれてしまっているような・・・


そこで「遠野物語」ですよ。
モノが古いだけに読み手側への斟酌など無く、「そのもの」を叩きつけてくる。
「遠野物語」は内容こそ圧倒的に面白いが文語体なのでやや難解であるし、「山の人生」
は話自体は引き込まれるような蠱惑的な力に満ちているが、起承転結が無いから読み物と
いうより資料的な感じだし、「山人考」は講演の手稿そのものなので、非常に興味深いが
どうにも読みづらい。

それでもこの本の持つ魅力はいささかも衰えない。
めんどくさいけどめちゃくちゃ面白い。

この本をお薦めする理由は「遠野物語」と「山の人生」「山人考」が併せて収録されている点に尽きる。
まったく個人的な見解ではあるが「遠野物語」を読むならば、
「山の人生」「山人考」も併せて読んだ方がより楽しめる、と思っている。
娯楽として読むのだから、民俗学的に考察する必要はないのではあるが、
併せて読めばより味わいが深まるのは間違いない。

「遠野物語」を読んだ人は多いだろうけど、「山の人生」は未読の人もいると思う。
せっかくこの怪しくも幻想的な世界に触れたのだから、もうちょっと手を伸ばしてみてはいかがだろうか。