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『絶滅動物物語』 うすくらふみ 今泉忠明  (小学館)

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『絶滅動物物語』 うすくらふみ 今泉忠明  (小学館)

富士宮店・店長:河合のおすすめ



気楽な物語が好きだ。
自分の読むすべての物語は「幸せな結末」であってほしい。
娯楽で楽しむのだから「ご都合主義」で「ラッキーでハッピー」でいいじゃない?
という私がなぜこの本を手に取ってしまったのか。

これは、人間によって絶滅させられた動物たちの短編集。

絶滅に至るまでの過程を、人間の業を主軸に淡々とした筆致で描かれていく。
そのある種の静謐さを抱える終焉が刺さる。本当に痛い。
この物語を読むまでは「絶滅」に対する興味はあまり強くなくて、
「長い歴史の中で膨大な数の絶滅が起きており、人間や人間が原因の環境変化はその一要因でしかなく、
次なる進化への触媒という可能性もある」などと考えたこともあった。

だが、巻末の監修者による一文が恐ろしい。
その推測を結論付けるにはまだ時間が足りないだろうが、
答え合わせができる頃まで、人間は命脈を保っていられるとは思えない。

豆腐のように脆く芽吹きたての若葉を思わせるような繊細な我が心を揺さぶったこの本、
絶対の自信を込めてお薦め!ぜひ!