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『ゴールデンカムイ 1』 野田サトル (集英社)

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『ゴールデンカムイ 1』 野田サトル (集英社)

アピタ磐田店・店長:永山のおすすめ



今さらこんな有名タイトルをおすすめしてよいものだろうか……
そんなためらいは十二分にあったものの、4月からアニメ放送がスタートするこのタイミングだからこそ
改めてこの漫画を紹介したい!

舞台は北海道。
時代は日露戦争終結後の明治。
主人公・杉元と相棒のアイヌの少女・アシリパ(※リは正確には小文字表記)、反逆の第七師団、網走の脱走囚24人。その他諸々謎めいていたりいなかったりする、癖の強い登場人物たち。
ただ一口に金塊目的といっても、単なるお宝探しでもない。幼なじみのためだったり、父の仇だったり、真に目的とすることはそれぞれ別にある。
そしてそんな中、「ほんとうは何が目的なのか?」「なぜこの戦いに参加しているのか?」読めそうで読めない食わせ者が、敵味方問わずちらほら。
というより「敵」「味方」とはっきり分けられない関係性が非常に強く、本当に「昨日の敵は今日の友(協力者)、そしてまた明日は敵」になっていたりするごちゃ混ぜ感がおもしろい。
北海道の大自然との闘い、“不死身の杉元”をはじめ、超人的だったり変態的だったりな男たちの命を煌めかせる戦いも魅力的だけれど、個人的に、この物語の中で特に欠かせないと思えるのが食の場面。
山や海で獲った命を余すことなくいただく、そのためのアイヌ独自の食文化、アイヌとシサム(アイヌ語で和人)との違いなどが、時にギャグを交えて(ヒロインがここまで振り切った変顔をする漫画はあまり知らない)時に考えさせられる筆致で表される。
母熊を失った子熊を懐に隠し、重傷を負いながらも懸命に生きようとする鹿を仕留められない杉元の心情も分かるところがあり、それでも他の生きものの命をもらって生きていくことを語るアシリパの凛々しさにあこがれもする。
様々なものが異なる二人が互いを相棒と認め、共闘する様は力強く、共に食し共にヒンナし、オソマオソマとはしゃぐ姿がほほえましい(※ヒンナとオソマの意味は本編で)

主に序盤は、割とグロい描写があることは否めないので、苦手な方は最初は少しとっつきづらいかもしれない。現に私もそれで数年敬遠していた。
ただ、一度この世界を知ってしまえば、それでも先が知りたい、と思わせるだけの物語の熱量、魅力的なキャラクターの引力に惹き込まれる。

アニメが始まる一足先に「ゴールデンカムイ」の世界に触れ、そこに飲み込まれてみれば、動き、喋る彼らを見た時により一層の感動や興奮に浸れるかもしれない。