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『直売所、行ってきます』 松本英子 (朝日新聞出版)

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『直売所、行ってきます』 松本英子 (朝日新聞出版)

バイヤー:永山のおすすめ



直売所。
に、対しての思い入れやときめきは特にない。
ないけれど、松本英子さんに描かれてしまっては、読後には手の平を返すように近場で行けるところを探しているだろうな、と予想もできていた。

旅というにはもう少し身軽で、散歩よりはおでかけ感のあるちょうどよい距離感。
地元だけれど行動範囲外ゆえに見落としていたり、意外なところで作られていた品々との出会い。
はちみつ、アーモンドバター、新茶、アイス、ブルーベリー、おやき……
趣味が思わぬ縁で広がりを見せたりたり好きが高じて仕事にしてしまったり、作る、売る人びとも背景はさまざま。(メダカの直売所のそっけないおじさんが気になる。)

その土地ごとの生々しいエキスを感じられるような凝縮された空間の、えもいわれぬ心地に身を任せる。
道ゆき、うまくいかないあれこれやら嚙み合わなさが生まれるときもあり、じたばた後悔したり、受け入れたり受け入れなかったり。
楽しい!だけでないままならなさは、いつのものかも分からない、いつかどこかに出かけた時の記憶とふしぎと重なる。
少し遠くまで足を延ばしたあの快い疲労感がむしょうに恋しくなって、読み終えた後は案の定、近場の直売所を探していた。