「戦争」・「平和」について子供たちに伝える絵本が今注目されています。
昔から読まれている日本の絵本は、悲惨な事実を描き、「二度と戦争を起こしてはいけない」と思わせる印象
がありましたが、ここ数年で出版されている絵本は、言葉や挿絵から、
読み手に「戦争とは?」「平和とは?」と考えさせるような絵本が多い印象があります。
そんな中、2019年に出版された『字のないはがき』は、向田邦子さんの実話をもとに描かれ、
人の顔が一切出てこないのに、戦争の辛さが伝わってくる絵本として注目をされていました。
戦争が激しくなり、疎開をすることになったまだ字も書けない幼い娘を送り出すお父さんは、
数えきれないほどのはがきを持たせ、
「元気な日ははがきに○をかいてポストにいれなさい」と娘に伝えました。
はじめて届いたはがきは、はみ出すくらい大きな○だったのに、次の日からどんどん○は小さくなり、
やがて×になってしまったのです。
この描写から、この絵本に書かれていなくても、幼い女の子が辛い日々を送っていることが伝わってきます。
また、幼い娘が帰ってきたことがわかると、裸足のまま真っ先に飛び出し、いつもは厳しくて恐いお父さんが
娘を抱きしめて声をあげて泣いたのです。
ここからも、当時の家族はとても辛く、悲惨な時代だったことを私たちは感じることができます。
私たちは学校の授業で、戦争の事実を知ることができますが、
戦争時代の人々の辛さや悲しみはこういった絵本からの方が胸に響くのではないかと思わされた絵本でした。
こういった絵本をお客様に紹介することも「平和」のために書店員としてできることのひとつかもしれません。