『マイ スモール ランド』川和田恵真(講談社)
この本にたどり着いたのは、本が人生の中心にある自分にとっては稀なケース。
日本に、ROTH BART BARONという素晴らしいバンドがいる。
最近でいうと、アイナ・ジ・エンドとのユニット「A_o」で、ポカリスエットのCMソング「BLUE SOULS」の曲を手掛けている。
僕はとにかくこのバンドが猛烈に好きで、先日やっとコロナで延期になっていたライブへ行ってきた。
そこで、アンコールに「New Morning」という曲を演奏した。映画「マイ・スモール・ランド」の主題歌だ。
そのライブ演奏があまりに素晴らしく、曲を聴いていたらとにかく映画を観たくなり、いても立ってもいられずすぐに映画を観に行ってきた。
そして、映画「マイ・スモール・ランド」。
これまた本当に素晴らしい映画で、まぁ自分は本や映画でよく泣くのだが、映画館でボロッボロに泣いた。
途中途中涙がポロポロとこぼれて、まずいぞ、と思っていたのだが、エンディングでROTH BART BARONの「New Morning」が重なった瞬間、涙腺が崩壊した。
そうして、最期は本だ。
音楽から入り、映画を経て、最期に本にたどり着いた。
川和田監督自ら描き下ろした小説「マイ・スモール・ランド」。これまた本当に良かった。
ストーリー
埼玉で家族と暮らすクルド人の女子高校生サーリャが主人公。
サーリャは日本人と同じ様に高校生活を送っていたが、ある日突然家族が在留資格を失ったことで生活が一変する。埼玉から出ることや家族含めて労働することを禁じられ、様々な制限が課せられた中で、解雇されたアルバイト先で出会った聡太との交流を深めていく。彼との出会いをきっかけに、サーリャは葛藤しながらも成長していく物語。
曲を聴いて、映画を観て、本を読んで。
自分が日本で生まれ、日本で暮らすことに何不自由なく困ることもない ”日本人” であること、そのものに居心地の悪さを感じてしまった。
自分も海外生活をしていたことがあるため、異文化で暮らす異邦人の思いは少なからず分かっているつもりだったが、こういうことが実際にあるのだろうなと想像すると、やるせなくなってしまった。
こういった世界がある現実にに目を背けず、知る。
もう一度、音・画・文のこのサイクルを体験したくなる、そんな物語だ。