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『夏の陰』(KADOAWA)

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『夏の陰』(KADOAWA)

営業本部:野尻のおすすめ

 

『夏の陰』岩井圭也(KADOKAWA)

岩井圭也先生の作品にハマっている。
デビュー作「永遠についての証明」から、この「夏の陰」「分身」までは発売するたびに買って読んでいた。
その後特に理由はないが、気がついたら「水よ踊れ」「生者のポエトリー」「最後の鑑定人」と、何故か数作抜けていたが、結構読んでいた。
今回、最新作の「最後の鑑定人」を読んであまりの面白さに、やっぱり岩井先生の本は面白い!
と「夏の陰」を読み返したら、今度はやっぱり「夏の陰」すごい!
となり、文庫化もされている「夏の陰」からおすすめしようと思い取り上げてみました。
先日出演したラジオでも紹介させていただきました。


物語の主人公は二人。
一人は、父親が起こした立てこもり事件の人質となり、父はその事件で警察官を銃で撃って命を奪い、直後に自らも自殺してしまう。
そんな殺人犯を親に持つ青年・倉内岳。
もう一人は、その事件で銃で撃たれ命を落としてしまった警察官の息子、辰野和馬。
この対極にいる出会うべきではない二人が、夏の京都を舞台に剣道を通じて出会うこととなり、そこから生まれた人間ドラマの物語。

見どころは、この二人が背負ったそれぞれの人生の重さ、孤独、苦悩を巧みに描く心理描写。緊迫感があり、ぐっと迫ってくるものがある。
また、加害者と被害者それぞれの残された家族と世間との関わりの部分も、読み応えがある。
そして、エピローグで明かされる真実に胸を締め付けられる。

改めて読み返して、物語の構成、なめらかな文体、浮き立つ人物造形、現代社会への問題提起と、物語の奥深さに驚いた。
もう、早く何か大きな賞を獲ってほしいな。
そしてもっともっと話題になってほしいな。
と、思います。
いや、我々書店がもっと頑張って、先にもっと売らないと。。。