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『夜が暗いとはかぎらない』 寺地はるな (ポプラ社)

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『夜が暗いとはかぎらない』 寺地はるな (ポプラ社)

営業本部:野尻のおすすめ



寺地はるなさんの作品に魅了されている。
この「夜が暗いとはかぎらない」の装丁を、浜松のイラストレーターの akira muracco さんが担当されており、そこをきっかけに以前から気になっていた寺地さんの本をついに手にとった。
そこから、立て続けに6冊程読み、すごい作家の本を読んでいなかったなと、少し反省した。


当時、佐藤多佳子さんの「明るい夜に出かけて」を読んだ直後に、この寺地さんの「夜が暗いとはかぎらない」を見つけたこともあり、何か運命的なものを感じた。
それにしても、「夜が暗いとはかぎらない」。
まずはなんて素晴らしいタイトル。


13編からなるこの連作短編の物語はこうだ。
とある街で閉店がきまった「あかつきマーケット」のマスコット・”あかつきん”が突然失踪し、その後街のあらゆる場所で目撃される。その行き場の無いあかつきんと、街に住むごくごく普通の人達それぞれが抱える「行き場のない思い」とをうまく絡めた物語。心に刺さる言葉がたくさん散りばめられた物語で、何度か涙腺が緩んだ。

中でも、「はこぶね」は特にぐっときた。
周囲の人々の期待通りの人となるべく必死だったある女の子が、自由奔放な叔母から、
「あたなの未来も、心も身体も時間も全部、自分のもの。他人の期待に応えるために生まれてきたわけやない。他人に渡したらいかん」と言われ、色々と悟るシーン。

二人子の親である自分も気がつくと身勝手な期待を子どもに抱いて、それをいつの間にか押し付けてしまってはいないだろうか。
年齢に関係なくそれぞれの自己をしっかりと尊重し、対話する中でサポート出来ることを親としてやる。
ただただ彼らの幸せを願い、子どもたちそれぞれにとっての幸せのために何が出来るか。
自分の人生を全部自分のものとして楽しんでもらいたい。
そんなことを、この「夜が暗いとはかいがらない」を読んで、考えさせられた。