ここに集められた言葉を日常生活のなかで聞いたとして、半分はするっと聞き流してしまいそう。というか、実際聞き流しているな……と思うものもちらほら。
もう半分は言葉そのもの/言葉の組み合わせ/不可解さ/見え隠れする背景、諸々のインパクトに、確実に発言者を二度見してしまう。そう確信できるほど言葉のエネルギーが強い。
「バーベキューって何回やっても駄目なんです！」
「彼が求めてるのはメーテルなんです。でも、あたしはメーテルじゃない。あたしだってメーテルが欲しい」
「猛犬にっこり」
突拍子もなく/何の気なしに/テンパって/深刻に/熟考の末/形骸化した……多種多様な状況と背景をもって放たれた言葉のなかに隠れている煌めきが、穂村弘という人を媒介することで輝きを放ちながらこちら側に届けられる。
どれもこれも、まるで詩みたいな肌触りを持っているのに、そこに内包されている「現実」の凄みに、笑いながら慄いてしまう。