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『まいまいつぶろ』 村木嵐 (幻冬舎)

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『まいまいつぶろ』 村木嵐 (幻冬舎)

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時代小説を読んで泣いたのは、この「まいまいつぶろ」で2度目だ。
1度目は司馬遼太郎さんの「戦雲の夢」。
もう数十年前のことなので、何で泣いたか、どこに感動したのかは覚えていない。
ただただ、時代小説で初めて落涙したので覚えていた。

そして今回、その司馬遼太郎さんの家事手伝いをしていたという村木嵐さんの「まいまいつぶろ」で泣いた。
しかも、何度か泣いた。
村木嵐さんの小説は「マルガリータ」を読んでいたのでその整った文章の心地よさは知っていたが、これほどまでに静かに熱い血の通った物語を書く作家さんだという印象を持っていなかったので、その点でも大変感動した。


江戸時代に対しそれほど深い興味を持っていなかったこともあり、江戸幕府第九大将軍・徳川家重が"まいまいつぶろ”と揶揄されるような、言語・手足に障害を持っていたことは知らなかった。
初めて知るその事実や、誰も言葉を聞き取れない家重の話を理解することができるという忠光の存在と、傍から見たらその危うい主従関係に深い興味を抱き物語に没頭した。


SNS等の影響で、人と人との関係性がリアルだけではなくなった現代、なんとなくその関係性というものが希薄になってしまったと感じる。
こんな現代だからこそ、この家重と忠光との主従の関係、そして主従を超えた1人の人間としての関係性は、多くの人に知ってもらいたい。