私の「火の鳥」原作との初めての出会いは、中学校の図書室でした。
1巻から読み始めた私は間もなく、この壮大で哲学的な物語を、
正直難しくて私にはわからない、と思ってしまいました。
でも同じクラスに熱心に「火の鳥」を読んでいる友達がいて、
ある時思わず「おもしろい?」と尋ねたら、
「おもしろい、とかじゃなく、これは読まないといけない」と、力説されました。
その時の友達の熱量が忘れられなくて、その後も機会があるごとに読み返していました。
毎回、前回よりは理解できた気はしましたが、何度読み返してもやっぱりちょっと難しい。
それが私の長年の「火の鳥」のイメージでした。
その「火の鳥」が誕生して今年で70周年ということを記念して、絵本版「火の鳥」が刊行されました。
絵本化をされた鈴木まもるさんは、絵本化するにあたり、
手塚治虫が何をを伝えたかったのかを考え、
それを小さな子どもたちにも分かりやすいように工夫されたと、取材記事の中でおっしゃっています。
私も、この絵本版「火の鳥」を読んで、物語の根幹になっているのが、
「生命は平等にみな尊い」というテーマであることを
鈴木まもるさんの絵と文章によって、やさしく、わかりやすく教えていただきました。
難しいと思っていた物語のテーマが、急に親しみやすく感じられました。
中学生だった友達は、きっと「生命」という大きなテーマについて
「火の鳥」をよむことで真剣に考えていたんだろうな、と思いました。
この絵本を読んだ後なら、
もっとあの頃の友達の真剣さに同感することができたかもしれないな、と思いました。
「火の鳥」にはじめて出会う、小さな子どもたちはもちろん、
「火の鳥」に様々なイメージを抱いている大人たちにも、是非手に取っていただきたい一冊です。