「おれの なまえを、しりたいか?」「おれは、あむだ。」
この絵本の表紙で、凛々しい姿でこちらを見ている黒い犬のあむ。
自分のことを「おれ」と呼ぶあむの語りでお話が進んでいきます。
どうやらあむは、飼い主のかっちゃんが大好きで大好きでたまらないようです。
「一緒に海までさんぽしような」と大好きなかっちゃんに誘われたつぎの日、
友だちから海に行こうと誘われたかっちゃんは、「ごめん!」と言いながらも
あむをおいて海に行ってしまいました。
「かっちゃん かっちゃん、おれもいく。」と懇願しても大好きなかっちゃんには想いは届かず必死にもがいていたら、
なんとくびわがはずれたのです!自由を手に入れたあむはかっちゃん目指して海へ向かいます。
最初は威勢よく進んでいたあむだったのですが、だんだんとかっちゃんがいないさびしさに見舞われてきました。
かっちゃんを想いさびしい気持ちを全面に出すあむの姿に、読んでいるこちらも同情してしまいます。
途中、欲に負けて落ちていた魚をたべてしまい腹痛に苦しみ、松林の中で足の裏がちくちくするよ!
夏の砂浜で砂が熱いよ!足が埋もれて重いよ!と次々を弱音をはきだすあむ。
さっきまでの凛々しい姿の犬はどこにいってしまったのでしょう(笑)
同作者の『わにわにシリーズ』でも発揮されていたリズムの良いあむの語り口調、
そしてつぎつぎと状況に応じて変化するあむの表情。どれをとっても引き込まれてしまった私。
この1冊であむは、なんと22回も「かっちゃん」の名前を口にしています。
「かっちゃん、愛してま~す!」とあむの心の叫びが聞こえてきそうなラストに、
思わずみなさんも安堵することでしょう。