本って素晴らしい! と、再認識させられた、思い入れのある一冊です。
世界各地に伝わる様々なヒョウタンの種類や用途、工芸品が紹介された、
興味深い内容です。
読めば意外な驚きが待っています。
さて…
この本の何に感動したのかと申し上げますと、本の存在そのものです。
本書を最初に手に取って思ったのは、「面白そうではあるが誰が買うのか?」でした。
店員としては、本を手に取るたび、どういう方が購入されるのだろうかと想像するのですが、
本書については見当がつきませんでした。
ヒョウタンが好きな方でしょうが、それはどういう方なのか? わかりません。
そう考えた時、出版を決めた版元に拍手を送りたくなりました。
学術的な価値を考えれば素晴らしいとは思うのですが、おそらく多くの人にとって
ヒョウタンは身近ではないでしょう。
歴史や種類、文化的価値を知っても、なるほどそうか、で終わってしまう話であり、
役に立たない知識かもしれません。
ですが、「役に立つ」だけが重要なのでしょうか。
一見無駄とも思えるもの、生活に必要ではない知識。
こういったものがあるからこそ、心の余裕のようなものが生み出され、
豊かな文化を形成することができるのではないでしょうか。
とはいえ、そのような書籍も売れなければ、いずれ版元も刊行できなくなってしまうかもしれません。
インターネットには情報があふれています。
しかし、目的もなく漠然と何かを探すには適した媒体ではありません。
探すだけで疲れてしまいますし、いちいちこのサイトはアクセスして大丈夫なのかと
心配しなくてはいけません。そのうえ、玉石混交も甚だしい状況です。
本であれば、版元の名前でもおよその見当は付くうえ、この本をさわって大丈夫か、
などと心配せずとも済みます。
本屋、図書館、本のある所に足をお運びになれば、思いもよらない知識との出会いが、
きっと待っています。
「ヒョウタン文化誌」はこういった、本を巡るあれこれについて考えさせてくれた一冊です。
良質な文化のためにも、また、良質な知識を提供してくれる良書を守るためにも、
ぜひ私にとっての「ヒョウタン文化誌」のような、皆様にとっての良書を見つけて、
お手に取っていただければと思います。