なんだろう。
何がこれほど自分の心に響いたのだろう。
いい。
すごくいい。
そして、意味もわからず涙が溢れた。
全く的はずれかもしれないが、個人的にそれはキリンジのあの名曲『エイリアンズ』を聴いた感覚に酷似していた。『エイリアンズ』を聴いた時同様に、読後ぼんやりしてしまった。
どこか懐かしくて何故か切ない。悲しいわけじゃないのに、でも全然ハッピーなわけでもない。
何となく古い想い出の引き出しを、開けたり閉めたり・・・。
そんなことを考えながら、ぼんやりした。
同僚も読むであろう会社のホームページの本のレコメンドでは、この「1ミリの後悔もない、はずがない」を読みながら感じたことはストレートに言いにくい。
つまりは"恋”や”愛”、そしてそれに付随する”性”の、思い出さなくてもよいかもしれない「あの頃」のヒリヒリとした感覚を、この小説はまるで宇宙船に乗って冷凍睡眠から覚めたのように(もちろんそんな経験は、ない)すごいクオリティで呼び起こさせるのだ。
すごくリアルに。自分のどこにこんな記憶が眠っていたのか?と驚くほどに。
若気の至りで傷つけ、悲しませてしまい、別れてしまった恋人。
同じ夢を追って何年も一緒に過ごしたのに、今じゃ連絡先すら知らない仲間たち。
みんな思い出した。
みんな元気にしているかな。
幸せになっているといいな。
きっと、
この「1ミリの後悔もない、はずがない」を読みながら思い浮かべた数々の人たちによって、今の自分はあるのだろうな、と。傷つけてしまったことも、悲しませてしまったことも全部含めて、あのときは”ごめんなさい”と心で謝りながら、出会えたことに感謝したい。
こんな思いにさせられた小説に初めて出会いました。
なんともノスタルジックで切れた筆致。うん、キレッキレですな。
この一木けいという作家、2作目もすごいととんでもないことになりそうです。
P.S
この本をプレゼントしてくれた出版社のGさん。
何年も前に我が社を担当してくれていたのに、思い出して訪ねて来てくださったこと、
そしてこの編集担当した素晴らしい本をくださったこと。心から感謝いたします。