私は「かたいプリン」が好きだ。
一時はやたらと”なめらか”を売りにしたゆるいプリンが跋扈していたのを少し苦々しく、寂しく思っていたぐらいには「かたいプリン」派である。
このような、あまり主張する場もないけれど、実はこんな食べものが好き、この部分のこだわりはゆずれない、 ,本作はそういう類の、主役級とはいかない、でも心のどこかかたすみにいつもいて、ふとした拍子にめぐり会うとなんだかうれしい、 そんな食べものを『局地的王道食』として描いている。
「派手さはないけど素朴でいいヤツ」的食べものたちへの愛ががこれでもかと綴られ、その中に常日頃自分が抱いていた気持ちなんかが吐露されているとちょっとうれしくなる。
また、著者の分身である女性と、なんだかよくわからない球体の生物(通称モグさん)(かわいい)との掛け合いが、いい意味で遠慮がなく心地よい。
ある種めんどくさい愛を切々と語る著者への、モグさんのリアリストなツッコミにこちらもなぜだかドキリとしてしまう。 ,
普段おおっぴらに「好き!」と宣言することは少ない、下手をすると意識すらしていないのに「あ、これ自分好きだわ……」と何となく共感してしまう、 ,そういった”いとしい食べもの”たちがこの本の中には詰まっている。