Javascriptが無効になっているため、正常に表示できない場合があります。

『結局できずじまい』 ヨシタケシンスケ (講談社)

login
店員のオススメ

バイヤー

『結局できずじまい』 ヨシタケシンスケ (講談社)

バイヤー:永山のおすすめ




 
書店バイヤーとしては如何なものかと思うが『活字が頭に入ってこない時期』というのが不定期におとずれる。
目は文字を追っているのだけど内容がとんと頭に入らず、そのうち疲れて本を閉じてしまい、その瞬間今まで読んでいたことも霧散してしまう。
原因は疲れとかストレスとかいろいろだろうけど、ある意味本を読むこともストレス発散になる性質の人間でもあるので、読めないという焦燥がストレスの火種になっては困ってしまう。
何か読みたいけど文字が入ってこない、コミックでもいいけどちょっと違った切り口のものが欲しい、といった時、ヨシタケさんの本に助けられることが多い。

今や大人気絵本作家として全国の書店で一等地展開されているヨシタケさんだけれど、大人ならではのままならなさを、クスリと笑ってしまうように描いた作品も少なくない。
この『結局できずじまい』も、我が身を振り返ってみれば共感をおぼえる項目だらけだ。
ボウリングはその場の空気含めて苦手すぎてもう10年以上行ってないし、
歯医者の定期健診は行きそびれているし、
買ったのに読めていない本はそれこそ本棚の半分近くを占めているんじゃないだろうか?

「もういい大人なのに、他の人は何てことなくこなしているのに、自分はこんなことができない」
それは多かれ少なかれみんなが抱えている問題で、時には無性に人の心を苛む種にもなりかねない。
ヨシタケさんはそれらを深刻になりすぎず、ユーモアを散りばめながら『愛すべき欠点』に昇華している。
できないことはたくさんあって、それについてくよくよすることもあるけど、
『できないこと』の代わりに『できている』こともあるし、それぞれの『できない』を補い合いつつ生きていくこともできる。
何でもかんでもすぐに解決はできないけど、できないことを受け入れたら見えるものもあるかもしれない。
ただそうは言っても、歯医者には近いうちに行かないといけないということは分かっている。