出版業界が斜陽産業と言われて久しいが、この漫画のテーマである『ラジオ業界』もそのひとつに含まれよう。
現状に甘んじていれば行く先は衰退、そして消滅……
そんな業界へ一石を投じるべく白羽の矢が立てられたのが、札幌のスープカレー屋・鼓田ミナレ。
付き合っていた男に騙され、飲み屋でたまたま話を聞いてもらった隣の男がたまたまラジオ局のディレクターで、その際の赤裸々かつキレにキレまくった内容の話を勝手に録音され、勝手に公共の電波に乗せられるという裁判沙汰待ったなしの状況から、流されに流され何故か冠番組を持つことに。
ラジオを消さないためにとにかく面白さを追求する。
「泣こよかひっ飛べ」と言わんばかりの、薩摩隼人並のギリギリアウトな危うさで攻めてかかる。
まったくそういう内容ではないのに、まるで命の奪り合いをしているかのようなヒリヒリした感じは、熱い言葉を並べ立てて叫ばれるよりもよほどの勢いで脳を揺らす。
(実際、戦闘する必要皆無なはずなのに、何故か登場人物がことあるごとに戦闘力の高さを見せつけたり殺し屋感を出してはいるが)
それぞれの言葉も沙村節が効いていて、感情を吐露する長尺なセリフも愚にもつかない掛け合いも、単語ひとつ書き文字ひとつ読み飛ばしたくないほど切れ味が秀逸だ。
ラジオに興味がない?全然問題ない。
とりあえず1巻を読んでみて、ある意味ルール無用で無秩序で切実かつ渾身のミナレの語りを『聞いて』ほしい。