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『麻雀放浪記 1』 阿佐田哲也 (KADOKAWA)

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『麻雀放浪記 1』 阿佐田哲也 (KADOKAWA)

流通通り店:河合のおすすめ



昭和の麻雀ブームのきっかけになり映画化され、平成ではコミックとなり人気を博し、
さらには令和(厳密には違うが)になって再度映画化された本作が上映されるという、
人々に愛され続ける麻雀小説、名作中の名作です。

私ぐらいの年代(中年です!)で麻雀にハマった連中はみんな読んでました。
「麻雀放浪記」と出会ったのが、字の書いてある本なんて読むことすら想像できない不良に勧められたからで、読まないとシバかれると思って、恐れ慄きつつページを繰ったのもいい思い出です。

戦後復興期の猥雑さと力強さを下地に、登場する人物のすべて、立ち振る舞いやら思考の深さが濃厚で存在感がブ厚いんですね。
この荒くれた時代に、博徒として生活してきた作者の迫力がにじみ出ています。

主人公を物語最初の鉄火場へ案内する、かつての博打の師匠である「上州虎」との遭遇。
その鉄火場(チンチロ部落)で後の最大のライバルとなる「ドサ健」と出会うのですが、
その場でのやり取りがまた凄い。
チンチロ、正式名称(?)チンチロリンとは、サイコロをドンブリの中に落として出目を競う、原始的な博打です。
ドンブリの中でランダムに踊るサイの目を自由にする技術(イカサマは除く)なんてあるわけもなく、
ただ純粋に運の競い合いでしかないはずなのに、強い弱いの個人差が出てしまうんです。
そこで「ドサ健」の語る、勝負事における「押し引き」の重要性、カモの見つけ方、気迫の受け方、
運(ツキ)の移り変わりの前兆と見分け方、まぁどれもこれも光り輝くような珠玉の一言ばかり。
即座に順応して勝ちを積み上げていく主人公、それを面白く思わない人物が・・・

麻雀小説という枠組みに収まりきれないギャンブル小説、未読の方は是非!

追伸
「元禄積み」、「つばめ返し」、「ぶっこ抜き」、「エレベーター」、そして「散らし」に「上下」。
ここまで書けば「あぁ俺も練習したなぁ」というおっさんが沢山いることでしょう。
阿佐田哲也が亡くなって今年で二十年。
今では遠くに過ぎ去ってしまったあの頃を思い出して、もう一度読み返してみませんか?