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『くろいの』 田中清代 (偕成社)

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バイヤー(児童書)

『くろいの』 田中清代 (偕成社)

児童書バイヤー:井澤のおすすめ



女の子が一人で帰るいつもの道、塀の上にその「くろいの」はいた。
次に見たときは、バス停にすわっていた。
どうやらこの「くろいの」大人には見えてないみたい。女の子にしか見えてないのです。
ってこの文章だけ聞きますと、ちょっとした怖いはなしに聞こえてしまうことでしょう。
さし絵もモノクロなので、初めて読んだときは私もどこか恐る恐る読んでいたことを覚えています。

女の子が思い切って「ねえ、なにしてるの?」と声をかけたところから、「くろいの」と女の子の
二人だけの素敵な時間が描かれている絵本になっています。
「くろいの」は一言もしゃべらないけど、自分の世界の中で女の子をおもてなししているように見えて、
得体の知れない怖い生き物だった「くろいの」がどんどんかわいらしく思えてきます。
「くろいの」を追いかけて後をついていく女の子の姿は、となりのトトロのメイちゃんを思い出します。
そして、読み終わるころには、とても心地よい感覚に浸っている私がいました。
「くろいの」と別れ、最後に女の子が仕事帰りのお父さんを見つけ、一緒に帰るシーンがあります。
この絵本を読んでちょっぴり怖がった子たちがこのページを見て少し安心するんじゃないかなと思います。

絵本の世界にとても引き込まれやすく、童心に帰れる本なので、大人の方におすすめしたいです。