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『ひりつく夜の音』 小野寺史宜 (新潮社)

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『ひりつく夜の音』 小野寺史宜 (新潮社)

営業本部:野尻のおすすめ

 

『ひと』で2019年本屋大賞第2位を受賞してから、小野寺史宜さんの名前をよく見るようになった。
と、世間はそんな印象ではなかろうか。(違ったらごめんなさい)。
そこで、「ザ・俺は昔から知っていたぜ」を書店員のくせにやってみたい。

私は小野寺史宜さんのデビュー『ROCKER』からのファンだ。
今回の『ひりつく夜の音』のディキシーランド・ジャズとは違い、『ROCKER』はブルース・ロック、どちらも音楽をキーとした音楽小説だ。
小野寺さんはおそらく音楽好きで、音楽に対する造詣もとっても深い。私も大の音楽好きなので、まずその点から小野寺さんの小説が肌に合う。
そして小野寺さんの小説でも1,2位を争うくらい好きな『転がる空に雨は降らない』。
こちらは、交通事故の加害者と被害者の家族がサッカーを通じて交わっていく喪失と再生の物語。
小野寺さんの小説が好きな理由は、月並みな物言いだが、読後の爽やかさ。
『ひと』『みつばの郵便屋さんシリーズ』も素晴らしいが、他にもたくさん小野寺さんの小説には素晴らしい作品があるので読んでもらいた。

さて、この『ひりつく夜の音』。
私は音楽好きだがジャズはあまり詳しくない。
恥ずかしながらこの「※ディキシーランド・ジャズ」も知らなかった!
その「ディキシーランド・ジャズ」のバンドのクラリネット奏者・下田保幸46歳が、バンド解散後、かつての恋人の息子でギターリストの音矢とひょんなことから関わるようになり、ミュージシャンとしても人としても再始動していく姿が心地よい。
この下田の年齢が今の私の年齢と重なることもあり、今回敢えて文庫本を再購入して再読した。いやぁ、中年の気持ちがたまらないほどリアルに描かれていて、物語の中に自分を見つけることが出来た。
小野寺さんの文章はリズムが良くてとても読みやすい。サラッとしているのに、様々なシチュエーションを自分に重ね、読後色々と考えさせられる。
これから、もっともっと売れていく作家さんだと思う。
大ブレイク前夜、今のうちに読んで欲しい!


※ディキシーランド・ジャズ
 ニューオリンズ・ジャズとも呼ばれる20世紀初頭のジャズスタイル。
 特徴は、バンジョーとクラリネットがドラムやピアノ、トランペット(またはコルネット)、トロンボーンと共に編成されているところだろうか。
 1971年にオリジナル・ディキシーランド・ジャズ・バンドがニューヨークに進出して「ジャズ」が多くの音楽ファンに知れ渡ったそうだ。
 (ウィキペディアより)