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『ヒューマン・ファクター 新訳版』 グレアム・グリーン (早川書房)

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店員のオススメ

三方原店

『ヒューマン・ファクター 新訳版』 グレアム・グリーン (早川書房)

本沢合店・三方原店 統括店長:細川のおすすめ





その名を世界中に知られ、“世界一有名なスパイ映画”とも言われるイギリス映画「007」。
007とは、映画の主人公であるスパイ、ジェームズ・ボンドのコードネームです。
先日、同映画最新作(第25作目!)である「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」が、
6代目ボンドを演じる俳優ダニエル・クレイグの最後の出演作であると発表されて、ネット
等でも話題となりました。
このイギリス人スパイ、ジェームズ・ボンドが所属するのが、実在する情報機関「MI6」です。
海外における情報収集や各種スパイ工作を担当し、過去にも多くの著名人が所属していたと
言われています。

本書の著者であるグレアム・グリーンも、第二次大戦中にこのMI6に所属し、スパイ活動を
していたそうです。そのグリーンが、自らの体験を元に書いたのが本書です。

時は冷戦。情報部内の極秘事項がソ連に漏洩した疑いがあり、アメリカからの圧力とスキャンダル
を恐れた上層部は、秘密裏に部内の二重スパイを特定し、暗殺しようと目論む。そこには007の
ような派手なアクションも、目立つ活動も一切無く、地味な心理戦が展開されるのだが、あの大作家
・遠藤周作も当作に惚れ込み、自身の著作でも触発された台詞を残している程、文章が巧みでまるで
映画の脚本を読んでいるような気がしてきます。

情報部に属しながら、国を裏切る二重スパイとなった人間の哀しい心理描写と、実際のスパイ活動
の一旦を垣間見せてくれる世界観に、私もどっぷりと浸かってしまいました。