正直に告白します。
正面から向き合うと心を持っていかれそうだと思い、あまり感情移入しないよう注意深く読み進めていました。
なんというか、向き合うのがツライ小説で・・・。
ラスト手前までは。
世の中の理不尽なこと、自分一人の小さな力ではどうにもできないことには、正面から向き合っても自分の心が保てなくなってしまう。
そう思っているところがあるので、普段からなんとなくそういうことには向き合わないように過ごしていました。
だって、9.11も、3.11も、その他の痛ましい事件、事故、災害、全て気になって仕方がないけど、自分ひとりの力ではどうしようもないものだから。
そして、そこに自分を照らし合わせて自分の存在意義を、何者かを、なんて考えてたらまともじゃいられなくなってしまう。
そう思ってしまいます。
そんなことを考えながら、正直ツライなぁ・・・。
と思い読み進めていましたが、最後に本当に救われました。
予定調和的な感じではなく。
そう、人って一人じゃない。
そして人間って根本的には強いんだ、と。
かつて、これほど生きることに力を与えてくれるラストシーンに出会ったことはありませんでした。
途中までは、なんとも繊細で折れしまいそうな線の細い印象だったけれど、すごく力強い小説でした。
やっぱり西さんの小説はすごい。