ずいぶん昔に、友人からガラスペンと青いインクで書いた手紙をもらったことがある。
なんて洒落ているんだろうと感動して、それからは文具店に立ち寄るたび、インク売場を気にするようになった。
おおまかに色別で分けられてはいるけれど、青、というその単語の中身は途轍もなく広くて深い。
いかにも「青!」というイメージそのものだったり、夜の海みたいに黒が強かったり、ソーダや宝石のように透き通っていたり、メーカーや種類によって本当にわずかなわずかな色味の違いがあり、自分の理想の色を探そうと思ったらそれこそ沼に沈むがごとく突き詰めていかなければならない世界だ。
また、それぞれのインクにつけられている名前がこれまた粋なものが多く、名前がツボすぎる、という理由で手に入れたくなることもある。
(エルバンの「ビルマの琥珀」「忘れな草ブルー」とか……)
推しがいる人は、そのイメージカラーにぴったりくる色を追求してみるのも一興だろう。
ご当地インクの特集もあり、静岡県は意外と種類が多くて面白い。
掲載されている「ペンスタ磐田」の「高麗納戸」という深い青のインクを少し前にもらったが、それまでこんな近くにオリジナルインクを販売しているところがある、なんて知りもしなかった。
こうやって近くにあるのにノーマークだったお店だとか、逆に全国区だと思っていたらご当地ものだったりとか、ゆかりのある土地のインクをあれこれ見つけるのも楽しい。
ガラスペン、つけペン、万年筆……文具好きあこがれの道具たちに思いを馳せては、色とりどりのページを眺めるだけで、何かを書きたいような気持ちになってくる。
ただ、万年筆をきちんと手入れできるきちんとした性格ではないという自負があるので、この本で紹介されているようなコンバーター式の万年筆にインクを詰める日がくるかは、怪しいところだ。