時おり思い出すように須賀敦子を読み返すことがあります。
先日サンティアゴ巡礼を扱ったドキュメンタリー番組をみながら、 そういえば、と巡礼をめぐるエッセイが収められている 『ヴェネツィアの宿』を思い出し、パラパラと読み返しました。
著者が学生のころに参加した、パリからシャルトル大聖堂に向かう 巡礼の思い出をつづるエッセイです。
司祭が、これから巡礼に出る学生たちに呼び掛けます。
「『なにもかも、足りないものだらけです。からだにとって欠くことのできないパンが足りません。精神にとって欠くことのできないパンが足りません』
…きみたちにとって、精神のパンとはなにか、 巡礼の道すがら考えてくれないか。」
演劇や音楽などを楽しむことに、強い制限がかかっています。
私たちにとって欠くことのできない、精神のパンとはなにか。
生活様式が大きく変わりつつあるいま、
こうした問いを忘れないようにしたいものです。