Javascriptが無効になっているため、正常に表示できない場合があります。

『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』今村翔吾 (祥伝社)

login
店員のオススメ

営業本部

『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』今村翔吾 (祥伝社)

営業本部:野尻のおすすめ

 


『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』

今村翔吾さんの小説は、『童の神』しか読んだことがなかった。めちゃくちゃおもしろかったのだが、他の今村さんの本はあえて読んでいなかった。
それは読みたい本がたくさんある中で、シリーズ物に手を出してしまって万が一それがあまりにも面白いと、他の本を読む時間がなくなるからだ。いや、我ながら何という理由・・・。常に面白い本を追い求めている読書好きとしては本末転倒というか、なんというか。。。
それなのに、そんな思いから避けていた今村さんのシリーズものになぜ手を出したかというと。。

1ヶ月ほど前、地元のラジオに4週間連続で出演する機会があった。
K-mixのDoble Eyesという番組に出させていただいたのだが、その番組のパーソナリティのユーコ・タケダさんが大の読書好きで、なんと今村翔吾さんの大ファンだったのだ。
そこでユーコ・タケダさんと読書談義をしていたら、もうなんていうか、無性に今村翔吾さんの小説を読みたくなってしまい、面白いに決まっているのだから一気にシリーズにどっぷり浸かってやろうじゃないかと思い、この『火喰鳥』を手にとった。



いやぁ、とんでもなく面白い。
ダメですね・・・。久々に夜ふかし読書、早起き読書、昼休み丸々読書とどっぷり読書に浸かり、あっという間に読んでしまった。
火消しに焦点を当てた物語は、そのストーリーと言葉のテンポの良さ、際立つキャラ、熱い展開に心揺さぶられ、ドキドキとしながら目頭が熱くなった。
江戸の火消し、羽州ぼろ鳶組を率いる松永源吾の火消しとしての矜持と葛藤が読んでいるこちらの心にぐっと迫るようで胸が苦しくなった。

「火を消し止めて感謝されても、人々は数日でそれを忘れ去り、しくじれば怨嗟の声を投げつけられる。火消しとは日常に彩りを加えるものではなく、失われそうになる日常を保つ存在でしかない」
「命を救えず、火も恐ろしくなってしまったのに、火事がなくなることを恐れている。火消しは世の火種を一つ消すごとに己の存在理由を消している、それが恐ろしくてたまらない。このような男が火消しをすべきではない」

そんな思いを抱き葛藤しながらも、失敗・挫折を繰り返し、『人は何度でも立ち直れる』、そう信じてまた火に立ち向かう。
この熱い思いと迫力満点の興奮を、是非一人でも多くの方に味わってもらいたいです。
僕も久しぶりのシリーズ物(小野不由美さんの十二国記以来かも!)にどっぷりハマろうと思います。