本沢合店
『あめつちのうた』 朝倉宏景 (講談社)
本沢合店・学参担当:犬塚のおすすめ
何の取り柄もない兄と少年野球から実力を発揮している弟。
父は兄には見向きもせず弟の練習台になるなど、兄と弟では真逆の扱いを受ける。
そんな兄が就職先に選んだのが、阪神甲子園球場の土を整備する会社であった。
土を平らにするだけと思っていたがそんなあまいものではなく、グラウンドの整備ひとつで試合中に起きたイレギュラーで試合の流れを変えるだけでなく高校球児の一生も左右しかねないことを知っていく。
甲子園でエースピッチャーだったが監督のせいで肘を壊してしまった会社の先輩、小学生の頃脳腫瘍で入院ばかりしていたミュージシャンの女の子、ゲイでエースピッチャーの同級生など様々な人と出会いながら父との確執に揺れ動く。
「大事なのはグラウンドの表面だけではない。もっと下の層、奥野部分までしっかり水が届かんと・・・」
兄は一年経ってようやく心の天地をひっくり返して感情を開放する。
春の甲子園を心待ちにしながらじっくり味わってもらいたい本です。
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