葉真中顕さんの最新作が出た。
『灼熱』
装丁からもタイトルからもわかるように、熱い。
なんとも熱い小説だった。そして、その熱い想いが、読後心のなかに沈殿した。
今のところ個人的には本年度No.1だ。
語彙力がなくて申し訳ないが、まずは単純にめちゃくちゃおもしろかった。
ものすごいボリュームなのだが、むさぼるように読んだ。
物語は第二次世界大戦直後のはるか遠い異国、ブラジルで日本移民を二分した『勝ち負け抗争』がモチーフとなっている。異国の地で移民としてともに助け合ってきた日本人同士が、第二次世界大戦の勝ち負けをめぐり(事実は一つしか無いにも関わらず)、多数の死者を出す過激な抗争へと発展した。そんな『勝ち負け抗争』という史実が、第二次世界大戦後のブラジルであったそうだ。
これは有名な話なのか?恥ずかしながら僕は知らなかった。。。
さて、そんな『勝ち負け抗争』をめぐる物語ですが、自分の中での読みどころは大きく分けて二つ。
一つ目は、現代にリンクする点。
今までコミュニティの中心にいたものに対し、手のひらを返したような集団による誹謗・中傷・襲撃はなぜ起こったのか。
そして、「敗戦」がなぜ「勝利」と誤って伝わったのか。
ミスリードなのか、意図的なのか、集団極性化によるものなのか、没個性による群集心理なのか・・・。
そういった現代日本の写し鏡のような点、社会的、政治的なテーマがこの物語の一つの大きな読みどころだろうか。
そして二つ目。
物語の中で一番心に迫るものがあったのは、主人公である少年たちの心の繋がり。
そこには、尊敬も妬みも、憧れも蔑みも、疑念も裏切りも、信用も信頼もある。
何度も何度も、様々な出来事の中で揺れ動く思いを越えて、心の芯の部分で固く繋がっている。
そんな彼らの、信頼の熱さに心を打たれた。
ぜひこの熱さに触れてほしい。
この熱さを知ってほしい。