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『カミサマはそういない』 深緑野分 (集英社)

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浜松本店

『カミサマはそういない』 深緑野分 (集英社)

浜松本店 副店長:永山のおすすめ




著者曰く深緑ならぬ「黒緑」と形容される、ダークでほの暗い話を集めた短編集。

戦争が続くとある国、高射砲塔のすぐそばで、防衛線を越えてきた敵兵や森へ逃げる裏切り者を撃つ任務に就く少年たちを描く『見張り塔』
年に一度だけ太陽が輝く大放出の日を空腹で迎えると身体が消えてしまうとされている貧民窟、食事にありつけず大放出を迎えてしまった僕が見た世界と選択──『饑奇譚』
海面上昇により陸地の大部分が海に飲まれ、陸府に管理される世界に生きる16歳の音楽好きな高校生。年間に60しか配信されない新曲では足りず、聞いたことのない新しい音楽が流れると噂の「海賊ラジオ」の電波を探しに行く『新しい音楽、海賊ラジオ』

人の心に巣食う闇と罪。
戦禍のもたらした悲劇。
人知を超えた厄災。
人生に影を落とすものに直面した時、立っている世界そのものがぐらつき、黒い感情がどろりと流れ出す。
後味の苦さが強い、お腹の底に靄が立ち込めるような居心地の悪さを感じながら、その感覚をなぜかまた味わいたくなって再びページをめくってしまう。

物語の中でも、救いは常に訪れるものではない。
カミサマは「そう」いない。
そういないからこそ、ときに射し込んだそれは、ひときわ光って見える。