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『わたしのアメリカンドリーム』 ケリー・ヤン 田中奈津子  (講談社)

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『わたしのアメリカンドリーム』 ケリー・ヤン 田中奈津子  (講談社)

富士店:田雜のおすすめ


タイトルの「アメリカンドリーム」という言葉に皆さんはどんな物語を想像するでしょうか。
私は、一芸に秀でた主人公がニューヨークやハリウッドに行って、色んな努力や挫折をしながらも、
ついには夢の舞台に立って成功する、というありがちなのを想像します。
しかし、この物語のアメリカンドリームはそんなイメージとは少し違っていました。

主人公の女の子ミア(小学5年生)は両親と3人家族。中国からの移民としてアメリカで暮らしています。
両親がモーテルの住み込み管理人の仕事に就いたところからミアの生活が大きく変化し始めます。
ミアの両親は安定した職に就けず生活に困っていて、やっとのことで得たのが管理人の仕事でした。
最初は希望にあふれていた家族ですが、ひどい雇い主に騙され、労働条件は最低。
一日中働いても手元に入るお金はほんのわずか。
両親のために、ミアはフロントで受付の仕事を手伝い始めます。
モーテルのお客さんや学校の友達、ひどい雇い主とその息子、両親を頼って訪ねてくる同郷の移民たち。
いろいろな人との関わりあいの中で、ミアは社会の理不尽を目の当たりにし、
不公平な出来事に何度も立ち向かうことになります。

ある日、同じ移民の友達から、自分たちは「貧乏人のジェットコースター」に乗っているのだと言われたミア。
絶対にそこから降りてやろうと決心します。
そして偶然にジェットコースターから抜け出せるかもしれないチャンスに出会います。

ミアはその夢を実現するために「文章をかくこと」に挑戦します。 母国語ではない英語の成績はいつも悪く、  
母親にも否定され、自信を持てずにいましたが、ある時自分が文章を書くことが好きだと気づきます。
酷かった文章は次第に上達していき、才能を徐々に発揮していく様子が、読んでいて清々しい気分になります。
「好きなこと」があるって素晴らしい!と思わせてくれます。

私の想像したアメリカンドリームが一人の人物の華々しい成功物語だとしたら、この物語で描かれるのは、
みんなが少しずつ幸せで、希望を持てる人生になることを願う切実で温かい夢です。
この本はジャンルが児童書なのですが、読み終えたとき、これはお子様だけでなく、年齢、性別、国籍問わず、あらゆる方に読まれるべきだと思いました。

ミアがどんなドリームをつかみ取ろうとしたのか、結果は果たしてどうなったのか、
是非読んで確かめてください。