手間をかけず美味しく作れるレシピ本の種類は、いまや枚挙に暇がない。
この本でも50種のレシピを紹介してくれており、それ自体もすごく参考になるけれど、それ以上に『自炊が苦にならない考え方』を定着させることに重きを置いている感じが良かった。最初は調味料と具材を入れたお椀にお湯を注ぐだけの汁物から始まり、ページが進むと少し手の込んだものも出てくる。ただそこには「ここまで作れるようになりましょう」ではなく「余力があればこんなのもあります、でも無理ならこっちだけでも十分」というほどほどな力加減で料理に取り組める気安さがある。肩肘張らないから続くし、続くから少しずつ身になる。そうやって『自炊』を、『頑張らないといけないもの』から遠ざけてくれる。
昨今は安くて美味しいお惣菜ほかテイクアウト商品も外食もたくさんある。料理が苦手ならわざわざ自炊しなくてもご飯にはある程度困らない時代。
そんな中でも自炊をしたいという気持ちはあって、けどあれこれ切ったりいくつも行程を重ねたりするきちんとした料理はしんどい、そんな瞬間はたびたび訪れる。本棚にそっと忍ばせておくと、そんな時にそっと味方になってくれる本だ。